抵当権と言うと、マイホームを購入する際に住宅ローンを借りた人であれば耳にした事があると思います。不動産や金融業に携わる方であれば身近なワードではありますが、そうでない一般の方にとってはよくわからない言葉かもしれません。
『抵当権』に加えて、『根抵当権』というものも存在しており、不動産業者にとっては根抵当権だと分かった場合に残債(残りの借金)がないか確認しないと売買の際にトラブルになりかねないので注意が必要です。
抵当権とは
抵当権を簡単に言うと、お金を借りた人の返済が滞った際に抵当権のついた土地・建物を差し押さえる事のできる権利です。
決まった金額を借りて、特定の不動産を担保にするというものが抵当権です。
一般的には上記のような流れになります。
住宅を建てる・購入する場合には大きなお金を貸し出す事になるので、何の担保もなく貸すというのはリスクが高い。そこで支払いができない状態(債務不履行)が続いた場合には物件を差し押さえて、売却(競売にかける)することで貸したお金を回収するという流れになります。
登記簿謄本の権利部(乙区)を見ると、〇年〇月〇日 に誰からいくら借りたかという事が記載されています。見慣れている方であれば住宅ローンで金銭消費貸借契約を結んだと見当がつくでしょう。
抵当権には順位があり、その順位が上の抵当権者から優先的にお金を回収する事ができます。
債務者(借りた人)が亡くなった場合でも、返済の義務がなくなる訳ではありませんので、相続などで債務も承継する事になりますが、最近の住宅ローンには団信保険がついているケースがほとんどなので、死亡やガン・就業不能状態となって保険が適用になれば残債に対して保険金がおりるので心配しなくても大丈夫でしょう。
また、抵当権は債務がなくなる(完済)と、法律上はなくなりますが、登記簿上の抵当権を抹消するには手続きが必要となります。完済後には銀行から抹消に必要な書類がもらえるので、自分で法務局に行って手続きをするか、司法書士に依頼しましょう。
抵当権と根抵当権の違い
住宅ローンの場合は購入額に対して対象物件のみに抵当権を設定しますが、事業として考えられる収益物件のローン・事業資金の借り入れで不動産を担保に入れる・持っている不動産を担保に融資を受ける『リバースモーゲージ』などが根抵当権を設定するケースとして考えられます。
根抵当権の場合は担保にとる不動産の価値によって、極度額(貸せる上限)を設定して、その範囲内であれば繰り返し借り入れを行う事が可能です。完済後にまた借りる可能性があるので、当事者間の合意がなければ根抵当権は消滅しません。
根抵当権のメリット
上記のように、不特定多数の債権に極度額の範囲内で繰り返し融資することができるのが根抵当権の特徴です。
抵当権の場合は、設定する度に司法書士への登記費用と報酬が発生しますが、根抵当権の場合は最初の一回だけ設定すれば、二回目以降は極度額の範囲内で借り入れをすることができるので、設定登記費用が節約できるということが最大のメリットではないでしょうか。
ちなみに登録免許税が借入額に対して0.4% 、さらに司法書士への報酬・登記簿謄本の取得費・印紙代など合わせると1回につき5〜10万円程度かかります。
※司法書士の報酬額などは依頼先によって変動の可能性あり・上記金額はあくまでも概算です。
複数回にわたって借り入れを繰り返す場合は、抵当権だとその都度設定が必要になりますが、根抵当権の場合は最初の一回だけ設定すれば済むので登記費用が節約できます。
何度も高額の借り入れを行うというのは普通の会社員であればあまりないでしょうが、事業や不動産投資で借入先の銀行と今後も付き合っていく可能性があるのであれば、抵当権設定登記の費用が下がって経費削減効果の高い根抵当権の設定でいいのではないでしょうか。
コメント